○養育費とは
離婚する夫婦の間に未成年の子どもがいるときには、その子どもの親権者と監護権者を決定する必要があります。
子どもを監護する親は、子どもを監護していない親に対して、子どもを育てていくために必要な費用を請求することができます。これが養育費です。
離婚をしたとしても子どもにとって親であることに変わりがない以上、当然支払うべき費用です。
○養育費の考え方
養育費の支払い義務は、子どもが最低限の生活ができるための扶養義務の一環という程度を超えて、自分の生活を保持するのと同じ程度の生活を保持させる義務のことです。これを生活保持義務といいます。
つまり、養育費は、監護していない方の親が暮らしている水準と同水準を保てるように支払うものです。
したがって、養育費を支払う側が「お金がないから支払えない」と言って養育費の支払いをまぬかれることができるものではないのです。生活水準を落としてでも支払わなければならないのが養育費です。
○養育費の金額
婚姻費用と同様の方法で決定していきます。すなわち、夫婦間の話し合いで月額いくらか,という形で決定します。話し合いで決まらなかった場合には,裁判所に対して,調停を申し立てて,金額を決めます。それでも決まらない場合には,家庭裁判所の裁判官が審判で決定します。
裁判所が目安としているのは,裁判所が定めている「養育費費用算定表」(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/)というものです。また日本弁護士連合会においても養育費の計算方法(https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html)について定めているものがあります。
最近では,夫婦間の話し合いの段階でも算定表を用いることが多くなっています。具体的には,夫婦の収入・子供の年齢や人数等を総合考慮して決定していきます。
もっともこの算定表はあくまでも基準にすぎません。個別の事情に応じて養育費を決定する必要があります。
自分はいくら養育費を負担しなければならないのだろう,あるいはいくらの養育費を請求することができるのだろう,とお悩みの方は,一度弁護士にご相談ください。個別の事情等も伺いながら,適切な養育費を無料で計算いたします。
○養育費の請求・支払い期間
<始期>
原則として請求したときからです。したがって、過去にさかのぼって請求することはできません。離婚の際には、養育費について忘れずに協議しておくべきといえます。
<終期>
原則として、子どもが20歳になるまでです。したがって、たとえば子どもを大学まで進学させたいと考えている場合には、協議の際、あるいは裁判においてその旨を主張して、しっかりと卒業するまで養育費を払ってもらえるように、支払い者を説得しなければなりません。なお、よほどの特別な事情がない限り、裁判所は大学卒業までの養育費を認めてくれません。
○養育費を増額したい・減額したい
一度決めた養育費の金額も事情変更があった場合には、その金額を変更することが可能です。事情変更として、増額方向に働く事情は子どもが大病を患い医療費が多額にかかってしまう等です。他方、減額方向に働く事情としては、支払い義務者が再婚して子どもが生まれたことや、監護権者が再婚をしたこと等です。
養育費の増額・減額については、当事者間のお話合いで決定することができますが、まとまらなかった場合には、裁判所に調停や審判を申し立てることが必要です。
お相手から養育費の増額を請求された場合,どの程度増額しなければならないのか,あるいは養育費を増額してほしいけれどもどのくらい増額が認められるのか,さらには養育費の減額をお願いしたいけれど認めてもらえるのか等,様々なお悩みがあると思います。
そのような際には,一度弁護士にご相談ください。個別の事情をお伺いしながら,適切な養育費を無料で計算いたします。もちろん,相手方との交渉もしっかり行い,あなたのご要望の実現をお助けいたします。
○離婚協議書や公正証書の作成を
養育費は原則として月々分割で支払われます。中には一括でお支払されるケースもありますが、養育費の性質に照らしても、分割が原則です(一括で支払われる場合には贈与税が発生するので注意が必要です)。したがって、途中で支払われなくなってしまうという事態を回避するために、あらかじめ支払い方法や金額等については離婚協議書や公正証書を作成して明らかにしておくことが必要です。
支払いが確実に行われるか不安があると言う場合には,公正証書にしておく方がいいでしょう。
○養育費の支払いがとまった
<履行勧告・履行命令>
養育費の支払いについて離婚調停や離婚審判、あるいは裁判上の和解や判決によって定めているにも関わらず、その支払いがとまった場合には、裁判所から支払いをするように、相手方に命令をしてもらうことができます。これを履行勧告・履行命令といいます。
しかし、この履行勧告には強制力がありません。履行命令についても10万円以下の過料という制裁であり、養育費の金額に比して、非常に軽微なので、強制力に乏しいというのが現状です。
<強制執行>
離婚調停や離婚審判はもちろん、公正証書でとりきめた場合にも強制執行手続きをとることができます。強制執行の場合には、給与を差し押さえることによって養育費を確保することができます。
通常の強制執行では、差し押さえることができる給与債権は、4分の1までですが、子どもの養育費はその性質から、2分の1まで差し押さえることができます。
また、通常は将来発生する権利について差し押さえの申し立てをすることができないのですが、養育費の場合、その支払いが滞っているという実態があれば、支払い期限が到来する前でもあらかじめ申し立てをすることができます。したがって、養育費の不払いがあるたびに差し押さえの申し立てをする必要はありません。
もっとも、退職をしてしまうと給与の差し押さえをすることができないので、その場合にはどのような債権を差し押さえるか、どのような財産に執行をかけるか検討することが必要です。
○弁護士に依頼するメリット
養育費はお子さんの将来にとって非常に重要なものですが,一緒に暮らしていないお子さんに支払うという観点から,支払いを渋られたり,支払いが滞ったりしてしまいがちです。
離婚をすると決まっている以上,この点はしっかりと取り決めを行わなければならない反面,感情のもつれからうまくお話し合いがすすまないというケースも少なくありません。第三者たる弁護士が間にはいり,しっかりと適切な養育費を計算して,公正証書等に残して,離婚における取り決めをスムーズに行います。